近年、地球温暖化対策の重要性が高まる中、「ZEH(ゼッチ)」という言葉を耳にする機会が増えています。
ZEHとは、省エネルギーと再生可能エネルギーの活用によって、年間のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅のことです。
住宅購入を検討されている方にとって、ZEH住宅は魅力的な選択肢となるかもしれません。
今回は、ZEHの定義や種類、メリット・デメリット、そして補助金制度について解説します。
これからZEH住宅について詳しく知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
ZEHとは何か?その定義と種類を徹底解説
ZEHの定義・意味
ZEHは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、日本語では「ゼロエネルギー住宅」と呼ばれます。
文字通り、住宅で消費するエネルギーと創出するエネルギーの収支をゼロ以下にすることを目指した住宅です。
具体的には、高断熱化・省エネルギー設備の導入・太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用によって、年間の一次エネルギー消費量を大幅に削減し、正味でゼロ以下にすることを目指します。
2050年カーボンニュートラル実現に向けた政府の施策とも深く関わっており、今後の住宅建築において重要な役割を担うと期待されています。
ZEHの種類とそれぞれの省エネ基準
ZEHには、一次エネルギー消費量の削減率や創エネの有無によっていくつかの種類があります。
主な種類は以下の通りです。
1: ZEH:一次エネルギー消費量を省エネ基準と比べて20%以上削減し、再生可能エネルギーによる創エネを含めて年間のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅。
2: ZEH Oriented(ZEH指向型住宅):ZEHの要件のうち、断熱性能の向上と省エネルギー化(一次エネルギー消費量を省エネ基準と比べて20%以上削減)を満たす住宅。
創エネは必須ではありません。
主に、敷地面積が狭く太陽光発電システムの設置が困難な都市部の住宅に適用されます。
3: Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ):一次エネルギー消費量を省エネ基準と比べて20%以上削減し、再生可能エネルギーによる創エネを導入するものの、年間のエネルギー収支は75%削減にとどまる住宅。
寒冷地や多雪地帯など、創エネ効率が低い地域を対象としています。
4: Nearly ZEH+:Nearly ZEHの基準に加え、外皮性能のさらなる強化やHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の導入、電気自動車の充電設備の設置など、追加の省エネ対策を2項目以上実施した住宅。
5: ZEH+:ZEHの基準に加え、Nearly ZEH+と同様の追加の省エネ対策を2項目以上実施した住宅。
6: 次世代ZEH+:ZEH+の基準に加え、V2H(Vehicle to Home)設備、蓄電設備、燃料電池、太陽熱利用温水システムなどの高度な省エネ・創エネ技術を導入した住宅。
ZEHとZEH Oriented・Nearly ZEHなどの違い
ZEH、ZEH Oriented、Nearly ZEHの違いは、主に一次エネルギー消費量の削減率と再生可能エネルギーの導入の有無にあります。
ZEHは最も高い省エネ性能を要求する基準であり、年間のエネルギー収支をゼロ以下にする必要があります。
一方、ZEH Orientedは創エネを必須とせず、省エネルギー化に重点を置いた基準です。
Nearly ZEHは創エネを導入しますが、年間のエネルギー収支は75%削減にとどまります。
それぞれの基準は、住宅の立地条件や気候条件、予算などを考慮して選択されます。
ZEH住宅に必要な3つの要素 省エネ・創エネ・断熱
ZEH住宅を実現するためには、「省エネ」「創エネ」「断熱」の3つの要素が不可欠です。
1: 省エネ
高効率な家電製品の導入、LED照明への切り替え、適切な換気システムの採用など、エネルギー消費量を削減するための様々な工夫が施されます。
HEMSの導入により、エネルギー消費状況を可視化し、無駄なエネルギー消費を抑制することも重要です。
2: 創エネ
太陽光発電システムが最も一般的ですが、風力発電や地熱発電などの再生可能エネルギーを活用することも可能です。
創エネ量は、消費エネルギー量を上回る必要があります。
3: 断熱
高性能断熱材や高断熱窓の採用により、建物の熱損失を最小限に抑え、冷暖房負荷を軽減します。
適切な気密化も重要な要素です。
ZEH住宅のメリット・デメリットと補助金制度
ZEH住宅のメリット 光熱費削減・資産価値向上・災害への備えなど
ZEH住宅のメリットは多岐に渡ります。
1: 光熱費削減
省エネ性能と創エネによって、光熱費を大幅に削減できます。
余剰電力の売電も可能です。
2: 資産価値向上
高い省エネ性能は住宅の価値を高め、将来的な売却時の価格にも好影響を与えます。
BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)による高評価も期待できます。
3: 災害への備え
蓄電池システムの導入により、災害時にも電力を確保できます。
4: 快適な居住空間
断熱性能の向上により、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を実現できます。
ヒートショックのリスク軽減にも繋がります。
5: 遮音性の向上
高性能な断熱材には吸音効果のあるものもあり、騒音低減に繋がります。
ZEH住宅のデメリット 天候依存性・初期費用・メンテナンス費用など
ZEH住宅には、いくつかのデメリットも存在します。
1: 天候依存性
太陽光発電は天候に左右されるため、発電量が不安定になる可能性があります。
日照時間の短い地域では、創エネ量が期待値を下回る可能性も考慮する必要があります。
2: 初期費用
高性能な設備の導入には、高額な初期費用が必要となります。
3: メンテナンス費用
定期的な点検やメンテナンス費用も必要です。
4: デザインの制限
設備の設置スペース確保のため、デザインや間取りに制約が生じる可能性があります。
ZEH住宅の補助金制度の概要と申請方法
国はZEH住宅の普及促進のため、様々な補助金制度を設けています。
制度の内容や申請方法は、自治体や年度によって異なるため、最新の情報を各自治体や関係省庁のウェブサイトで確認することが重要です。
補助金制度を利用することで、初期費用の一部を軽減できる可能性があります。
申請にあたっては、ZEHビルダーまたはZEHプランナーの登録がある建築会社に依頼することが求められる場合が多いです。
ZEH補助金制度を利用する際の注意点
ZEH補助金制度を利用する際には、いくつかの点に注意が必要です。
1: 申請後の設計変更は基本的にできません。
2: 申請には、エネルギー消費量や断熱性能に関する詳細な計算が必要です。
3: 補助金の予算は限られているため、公募期間内に申請することが重要です。
4: 各制度の条件をよく確認する必要があります。
まとめ
ZEH住宅は、省エネと創エネを両立することで、環境負荷を低減し、経済的なメリットも享受できる魅力的な住宅です。
光熱費削減や資産価値向上、災害時の備えなど、多くのメリットがありますが、初期費用やメンテナンス費用、天候依存性といったデメリットも理解しておく必要があります。
ZEH住宅の購入を検討する際には、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、ご自身のライフスタイルや予算、地域特性などを考慮した上で、最適な選択をすることが重要です。
また、国や自治体による補助金制度を活用することで、ZEH住宅への投資負担を軽減できる可能性があることを覚えておきましょう。
ZEH住宅に関する情報を十分に収集し、専門家への相談も積極的に行いながら、後悔のない家づくりを進めてください。
この記事が、みなさんのZEH住宅に関する理解を深める一助となれば幸いです。